不安神経症

不安発作とそれに対する予期不安とで構成される神経症です。
不安発作とは、動悸、呼吸困難、めまい感、冷や汗、手足のしびれ感等が突然出現し、
それにともなって強烈な不安感がおそってくる状態です。
患者さんはこのときに「今にも死んでしまうのではないか」「気を失うのでないか」
「取り乱して発狂してしまうのでないか」などのパニックを感じます。
(最近はこれをパニック発作、不安神経症をパニック障害といったりもします。)

発作は一回だけの場合もあれば、数日の間に何回もくりかえす場合もあります。
不安発作には、体質的な要因もあり、素因をもった人が、身体的なストレス(徹夜や飲酒等)や精神的なストレスにさらされた時に起こりやすくなります。

現在、不安発作に対しては、抗不安薬という有効な薬剤があります。
実際に発作が起きてから間がない患者さんの場合、この薬を飲んだだけで完全に良くなってしまう人もあります。

しかし、多くの患者さんは、発作が起きた場面やそれに近い状況で、「また同じ発作が起こるのでないか」との予期不安が生じてきます。
これは心理的な不安ですので、例えば地下鉄で不安発作が起きた人は、「普通の電車は乗れても、地下鉄だけは乗れない」とか、 車を運転中に発作にあった人は、「高速道路は絶対に走れない」とか、その人特有の場面に対する不安感をもって来ます。
そして、そのような場面を回避するようになります。
しかし、一度回避すると、人間の心理として、ますますその場面に対する苦手意識が強くなり、最初は、地下鉄や高速道路だけだったのが、乗り物全般に広がったり、
美容院や映画館など外に出られない所で座っていなければならない状況がすべてだめになったりもします。
この予期不安が非常に強くなると、「家から一歩も出られない」「一人でいることができない」ということすら起こって来ます。
そして、これは心理的な不安であるため、一般に薬だけでは良くならないことがほとんどなのです。

このように予期不安にとらわれている不安神経症の人に対して、有効な治療法が精神療法であり、とくに森田療法では、予期不安が短期間に顕著に改善する方もめずらしくありません。

不安神経症の特徴
【1】不安発作(パニック発作)+予期不安からなる。
【2】不安発作には抗不安薬が有効。
【3】予期不安による生活や行動の制限が認められる。
【4】予期不安には、精神療法が有効で、森田療法の良い適応である。